「今日は合宿も最終日だし。夏に相応しく肝試しやるよ♪」
シガポが楽しそうに提案した。
すでに外はとっぷりと暗くなっており、部員全員明日は帰宅、と寛いでいた所だった。
『え~~~~っ!』その場にいた全員がギョッとする。
「き、キモ試しィ?!」
「なんだよ、それ!」
「なんでだよ~~!」
「ど―ゆ―脈絡??」
皆からのブーイングを気にする風もなくシガポは強引に事を決めていく。いつもの理路整然とした所は無い。
「夏は肝試し!…と言う事でここからペアを組むから。ハイ、ど―ぞ♪」
シガポは手作りらしい、割り箸を扇のように広げ、皆に差し出した。
「王様ゲームかよ?!」水谷が叫んだ。
「……いつの間に…」巣山が唸る。
「オレいっちば~ん♪」躊躇する皆をヨソに、田島が楽しそうに最初の割り箸を引いた。
「…何喜んでだよ?」花井が呆れたように言うが、田島の耳には届いていない。
「お!四番だ!やりィ~♪」無頓着に燥いでいる。
「打順決めてんじゃねーんだから…」
泉が突っ込みつつ次に引こうとしたら、瞬時、早く三橋が手を出した。
泉は信じがたい目で三橋の行動を見つめる。皆も同様だった。
「うおっ!」 「どおした!?」 「珍しく積極的だな…」ボソボソと呟く声がする。
『こいつなら絶対泣きながら反対すると思ったのに…』阿部が意外なモノを見る目で睨んだ。
「三橋!何番?!」
田島が三橋に近付くと、三橋は気にした様子もなく、割り箸の先を見せながら二カッと笑った。
「あ、オレ一番…」
「え~イイな~」
「へへっ そ かな?」
照れたように笑う三橋に皆がのけ反る。
『もしやコイツ…オカルト好き…?!』
意外な伏兵の出現に、皆反対する事が出来なくなってしまった。渋々ながらも順番に割り箸を引く。
「四番ダレ~~?」
田島が皆の箸を覗き込んで回っていると、
「あ、オレ…」西広が遠慮がちに手を挙げた。
「うおっ♪よろしく~」
「…うん」
ニコニコしながら近付く田島に西広もつられて笑う。
ペアを組んだ者同士ワイワイと騒いでいる中、残りの割り箸二本を持ったシガポが眼鏡の奥の目を光らせた。
「はい。後は花井と阿部だね」
差し出された二人がうっと詰まる。
阿部はムッツリと割り箸を見比べた。
「こんな事してナンか役に立つんすか?」
『うお~さすが阿部!』
花井がソンケ―のマナザシで見ていると、田島が間に割って入って来た。
「なんだよ~盛り下げんなよ!」
「こんな事すんなら、オレは寝てた方がい―ね」
「つまんね―な―!みんなでやるコトにイギがあんだろ~」
「オリンピックかよ?!やりたいヤツだけやればい―だろ?」
阿部の断固として参加する気はない態度に、田島は何か思い当ったように叫ぶ。
「あ~っ!もしかして怖いのか!」
田島のからかう言葉に、皆が阿部に視線を注いだ。
「…は?」
阿部は眉を顰め、田島を睨んだ。
「う、…え?」
驚いた三橋と目が合ってしまい、阿部はカッとして田島に怒鳴る。
「んなわきゃね―だろ!こんな事が野球に関係あんのかど―か、疑問だっつってんだよ!」
皆は疑いのマナザシで阿部を見つめるが、三橋だけは自分に怒鳴られたワケではないのに頭を抱えて震えている。
「い~や。ウソだね。怖いんだ~♪」
なおもからかう田島の胸倉を阿部が掴んだ。
「そんなんじゃね…」
「問答無用!全員参加!!」
「うあっ!?」
いきなりモモカンが阿部の後頭部を掴み怒声を発す。
阿部が田島の胸元から渋々手を離すと、シガポがニンマリと笑った。
「ハイ、ど―ぞ♪」
差し出された割り箸を花井と阿部がそれぞれ引いた。
お互いの順番が見えてしまい、目を合わせてゲンナリとなる。
「…よろしく」
花井が形だけの挨拶をすると、
「…最後かよ」
阿部はうんざりと答え、吐息した。
②へ続く